黒鯛(チヌ)釣りなどの外道で掛かるボラ、西日本を中心に時期によってはボラ専門で狙う釣り人がいるほど大変美味しい魚でもあります。
どこで釣ったどんなボラをどのように食べるのか、釣り人のためのボラ料理のポイントを紹介します。
外道として時には鬱陶しい存在のボラですが、上手に捌いて美味しく食べられれば、ボラに対する見方も変わるかもしれません。
ご参考になれば幸いです。
どこで釣れるボラが美味しいか?
ボラは、日本(北海道より南)だけでなく、全世界の熱帯・温帯域の海に生息しています。
沖で漁船の網に掛かることがあれば、沿岸の防波堤・砂浜・磯・河口(汽水域)などどこででも釣れることがあります。
ボラの美味しさ度合は、そのボラの生息域に依存すると言われています。
食性は雑食性なので、釣り人のオキアミにかかることもありますが、一方で付着した藻類や水底に積もったデトリタス(有機物粒子)を砂泥と一緒に吸い込み食料としています。
従って、例えばヘドロが堆積しているような大きな川の河口域を中心に棲むボラは非常に臭いし、沖の水が綺麗なところで取れるボラはそれほど臭わないし美味しいというわけです。
かと言って、臭いボラは全部料理に適さないかというとそうではありません。
沿岸で釣れるボラは大なり小なり、臭いニオイはします。
ニオイの強さで判断するのではなく、釣った場所で判断するようにしましょう。
- 沖、近くに河口が無い比較的綺麗な水の防波堤、磯、砂浜
→ 刺身他、全ての料理に - 水が汚い大都市近郊の内湾、河口の近く
→ 基本、加熱する料理に - 極端に汚染された河口域や運河など
→ 食べない
※普段沖に棲んでいるボラが河口付近に入ることもあるので、一概には当てはまりません。
あくまでも目安として見てください。
ボラが美味しい時期
「寒ボラは美味しい」とよく聞きますね。
晩秋~初春の寒い季節に釣れたボラは、海中の水温が低いため脂が乗っていて、更に身が引き締まっていて美味しいのです。
また地上の気温が低いので、釣ってから持ち帰り食べるまでに傷みにくいという理由もあります。
ちなみに、夏に釣れたボラでもしっかり処理して、食べるまで保冷していれば大丈夫です。
そこそこ美味しく食べられます。
また、ボラの産卵期は10月~1月で、その近辺で釣れるボラは卵を持っている可能性があります。
成熟した卵は捨てるのではなく、日本の三大珍味であるカラスミを作ってみては如何でしょう!?
ボラを持ち帰る前の下処理
沿岸で釣れるボラは、大なり小なり臭いニオイがするのは既出の通りです。
そのボラをありのままの状態で自宅に持ち帰るのは、お薦めできません。
台所が大変なことになります!
ニオイの付いたウロコは飛び散るし、内臓のニオイも強い。
家庭菜園で土に肥料として埋められる人はまだマシですが、集合住宅だとそうもいきません。
次のゴミ回収時までゴミ袋から漏れるニオイに付き合わなければなりません。
そこでお薦めなのが、釣った現場で下処理をして持ち帰ることです。
では、具体的にどうすれば良いか説明します。
(以下、人によってはグロテスクと思われる画像がありますので、ご注意ください)
- まずボラが釣れたところからスタートします。
写真のボラは60cmありました。 - 締めます。
①木槌などで頭の上に一撃入れ、脳震盪を起こさせる。
②エラの根本を切って血抜き開始します。
具体的には、包丁でエラを根本を切るか、40㎝台までのボラならクビを背中側に折ると同様に血管が切れて血抜きできます。
③5~10分、バッカンに汲んだ水に頭を下にして浸けておく等して血抜きします。※上記①で木槌が無ければ、省略しても構いません。
暴れるボラに注意しながら、手早く②以降の作業を行ってください。 - ウロコを取ります。
包丁の刃または背の部分を使って、尾ビレからウロコを取っていきます。
側面だけでなく、背中やお腹部分のウロコも取り漏れのないようにしましょう。今では、「飛び散らない」をセールポイントとしたウロコ取り器もありますので積極的に活用したいものです。
注)先に頭を落とすとウロコを取り難くなりますので気を付けてください。 - 頭を落とします。
胸ビレの根本にある硬い骨の横から包丁を入れ、内臓を切らないように注意しながら周りを切っていきます。
頭を引っ張り、内臓ごと抜き取ります。
この時、胃の入り口近くに幽門という部位があります。
別名「そろばん珠」または「へそ」とも言われ珍味の一つでもあります。串焼きや刺身にして食べると美味しいので、好みに応じて摘出します。
内部に泥状のものを持っていますので、海水で綺麗に洗い持ち帰ります。
<関連記事>ボラのへそ料理
- 腹ビレ部分を切り落とし、お腹を肛門まで割きます。
※この個体は卵を持っていたので、肛門付近は慎重に作業して卵は別に取り出しました。
- 腹腔内の膜を切開します。
背骨の窪みに血がまだ残っているのが分かります。
これは次の行程で落とします。 - 汲んだ海水で洗い綺麗にします。
付着しているウロコ、ヒラヒラしている膜、血などを丁寧に落とします。
この状態まで処理すれば少しニオイは残っていますが、自宅で衛生的な作業ができます。
- その他作業
- 上記までの作業を行っても、まだクーラーボックスに収まらないときは尾ビレも切ってしまいます。
- 切り落とした内臓は、海に落としてしまいましょう。
カニや貝のエサになります。 - 飛び散ったウロコと血は、バッカンで水を流し海に落とします。
少し固まった血は、タワシなどでこすりながら水で流します。
(後処理のことを考えると大きなビニールふろしきの上で作業すると効率的です)
- 上記までの作業を行っても、まだクーラーボックスに収まらないときは尾ビレも切ってしまいます。
さばく上での注意事項
作業中はどうしても場が汚れますし、そのような現場を見ると不快に感じる人もいます。
また、海に頭、内臓、血、ウロコなどを捨てることにより、場所によってはサメやトンビなどが集まって釣りに支障がでることも。
特にファミリー層が多い、人の多い釣り場での作業は慎みましょう。
その場合、血抜きだけしておき、ビニール袋に入れた状態でクーラーボックスに保管しておきます。
後に人の少ない別の海岸で作業するとよいでしょう。
ボラは料理の素材としても優良
基本的に生息環境の悪い影響を受けなければ、美味しく食べられる魚です。
その刺身は真鯛より美味しいという評判もある位です。
以下、部位毎に料理ポイントを説明します。
【身】:クセが無く柔らかい。上質な白味。マダイ同様色々な料理に使える。
【皮】:強靭な皮。火を通すと縮みやすい。塩焼きなどで焼く場合は、飾り包丁を入れると良い。皮のみを湯引きで食べても美味しい。
【内臓】:新鮮な内は、肝臓・胃袋・卵巣・精巣など、火を通す料理で食べられる。「ボラのへそ」は上述の通り刺身も可。
【骨】:素揚げで食べられる。沿岸物は多少臭いがあるので、出汁を取る目的では使いにくい。
【ウロコ】:しっかりヌメリを取って素揚げすると美味しい。
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<変更履歴(主なもの)>
2020/03/25 掲載写真内容が「衝撃的」と指摘を頂きましたので、対象と思われる写真にモザイクをかけました。